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ヘッジファンドを資産運用に活用するべきか?

ヘッジファンドを資産運用に活用するべきか?

ヘッジファンドでの運用提案

先日(2020年3月)、資産運用で少し悩みがあるというご相談がありました。その方は、金融機関に依頼してポートフォリオを組んで運用をしているようですが、今までとても安定してパフォーマンスが出ていたそうです。しかし、残念ながら最近では新型コロナウイルスなどにより相場環境が悪化し下落してしまいました。

まだまだ含み益はあるのですが、これからの資産運用を考えてこのような難局でも強い資産の組み換えなどを検討してほしいと金融機関に依頼したところヘッジファンドを一部組み入れたらどうかと提案されましたそうです。「ヘッジファンドは絶対収益を追求しており、相場の下落局面にも強い」という理由だからだという理由でした。

説明を聞くととても納得できることが多く、組み入れをしてみようかなぁと考えていますが、ヘッジファンドに投資をするのは初めてなので少し不安もあり、ヘッジファンドは組み入れるべきでしょうか?説明の通り安全ですか?といったご質問でした。

ヘッジファンドとは

ヘッジファンドは、年金基金や学校基金など長期で資産運用を行う組織、さらには長期投資家のスタンスである富裕層などからもとても人気が高い運用商品です。

主な特徴は、絶対リターンを目指し、価格変動(リスク)をできるだけ低く抑え毎年安定した成果を出すというものです。実際にいままで安定的な成果を残してきたことから資産運用において重宝されている商品です。上手に取り入れると、とても頼れる金融商品です。

さて、ヘッジファンドについての詳しい仕組みについてはここでは割愛し、特徴を簡単に説明させていただきます。投資市場においてある程度、想定されるような範囲で上下変動する相場局面ではとても安定した運用成績を残しますが、想定を超えるようなケースが起きた場合では、他の資産と同じように大きな損失を抱えることもあり、決してどんな相場でも万能な運用商品ではありません。

リーマンショックでは

一番わかりやすいケースとしてリーマンショックがあります。リーマンショックの時は、ヘッジファンドの預かり資産は大きく減りし、ある金融機関のリサーチ資料によると、預かり資産が200兆円から90兆円まで大きく減少したといわれています。その背景は、預かり資産価値の下落とヘッジファンドからの大量の資金流出が起きたからとされています。

一方で、その後の世界的な量的緩和で、現在は推定で300兆円を超えるまで膨張したとされています。 このことからも分かるように、想定を超えるような大きな下落相場においてはヘッジファンドですら運用で苦労するということが分かります。そのため、ポートフォリオに組み入れる絶対に安全ということでは無いことに注意が必要です。やはり、個別で優秀なヘッジファンドを選別していく必要があると言えます。

ヘッジファンドで一番注意すべきは流動性

さて、ヘッジファンドの選択の際に注意していただきたい一番大事なポイントは流動性です。 株や投資信託と異なり、解約したいタイミングで解約することができない、という流動性リスクがヘッジファンドに存在します。ヘッジファンドは基本的に45日ルールといって、4半期決算(多くのファンドは12月、3月、6月、9月の年4回決算をする)の45日前に解約申請をしなければならない、というルールがあります。 例えば、決算日が12月20日の場合は11月6日までに解約申請をする必要があります。

つまり、コロナショックのように1週間で15%以上も下落する場面では、緊急に資金が必要になった場合でもすぐに解約し現金化をすることができないのです。またヘッジファンドによっては「ロックアップ期間」が設定されているものもあります。ロックアップ期間とはお金を預けてから引き出すことができない期間のこと。ロックアップ期間は短くても3ヶ月程度、長いヘッジファンドだと1年間程度を求められます。 ヘッジファンド側としては、投資家のこまめな資金の出し入れを防ぎ、投資戦略を遂行するために設けている期間ではありますが、投資家側からすると、どんなに含み損が出ていようが解約できずにただ眺めることしかできないことになるため、大きなデメリットとして働きます。

更にヘッジファンドの状況によっては解約自体ができなくなることもあります。 ヘッジファンドは私募形式で募集されるものが多いですが、私募の場合、株式のような流通市場がありません。場合によっては解約制限がついているファンドもあるのです。実際リーマンショック時には、海外の大型ヘッジファンドが解約による資金流出を阻止するために、解約の受付停止を行ったところもいくつかありました。

このように流動性という観点で、ヘッジファンドのリスクは株価急落時に特に高くなるので注意が必要と言えるでしょう。提案されたヘッジファンドを組み入れるか判断するために、まずは流動性を確認することから始めていただければと思います。

年金基金や大学基金の運用でも重宝されるヘッジファンド

年金基金や大学基金運用などは、前述の通りポートフォリオにヘッジファンドを積極的に組み入れて運用しています。ヘッジファンドは基本的には安定した運用成績を達成し、ある程度の下げ局面でも強みを発揮することから資産運表に重宝される資産運用商品です。ハーバード大学、エール大学なども学校基金の運用には必ず組み入れ安定した運用益を得ています。広く成果が認められている証拠です。

ブラックスワンに弱さも

一方で、ヘッジファンドにも弱点があり、ブラックスワンに弱いという側面があります。ブラック・スワンとは、「めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事」のことです。 さて、ブラックスワンが起こるとヘッジファンドは大きくレバレッジを掛けて運用している場合があるため、想定を超えた大きな損失を被るリスクが高まるということを把握しておく必要があります。

ブラックスワンにヘッジファンドが弱い象徴的な例として、例えば1994年に設立されたアメリカの大手ヘッジファンド「LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)」が挙げられます。LTCMは、ノーベル経済学賞受賞者2人を擁したまさにドリームチームで、設立してから4年間の平均利回りは40%を突破するなど驚異的な成績を叩き出していました。 しかし、ロシア財政危機というブラックスワンが原因で1998年に46億ドルという損失を出し、破綻にまで追い込まれてしまいました。このようにブラックスワンが起こってしまうと、いくら優秀な人材が揃ったヘッジファンドであっても破綻にまで追い込まれるほどの損失を出してしまう可能性があるのです。

手数料の高さも

またヘッジファンドは手数料も高いです。多くのヘッジファンドは、購入手数料の3%~5%、管理手数料が年1%~3%、成果報酬として運用収益の10~20%程度が手数料として掛かります。例えば、仮に1億円投資をし、1000万円の利益が出た場合は、購入手数料が3%の場合は300万円(初回のみ)、管理手数料が1%の場合は100万円/年、成功報酬として、200万円程度、合計600万円程度の手数料は覚悟しなければいけません。もし利益が出ない場合は成功報酬を取られませんが、手数料だけで400万円を取られることもあります。手数料と期待リターンを勘案しつつ、もしヘッジファンドに乗り換えるのであれば、長期で考える必要があるでしょう。

ヘッジファンドは「絶対収益」のため、株価急落場面であっても収益を出すヘッジファンドもあります(実際に1ヶ月でS&P500が約30%下落したコロナショックでも、大きなリターンを出しているヘッジファンドもあります)。ただし、急落場面で利益を出せているヘッジファンドが全部でもありません。今回挙げたリスクを踏まえ、投資割合は低めにしておいた方が良いのではないかと思います。

ヘッジファンドの選び方

ヘッジファンドを選ぶときには、1)商品設計、2)パフォーマンスの2点から分析する必要があります。

まずは、1)の商品設計から説明します。まずは、流動性が高いかどうかを知ることが大事です。流動性の確保されたヘッジファンドを選ぶことは鉄則です。たとえば、解約頻度は毎月毎、四半期毎、半年毎などを把握することが必要ですし、また、ロックアップという解約ができない期間を知る必要があります。さらには、解約後、資金の受け渡しまでどの程度の日数がかかるのかなども知る必要もありますし、解約条項も把握する必要があります。 解約条項はヘッジファンドの優位に作られていることが多いので、ご自身できちんと把握していないと思わぬリスクを背負うことになりかねません。かならず担当者に上記の点を一緒に確認しつつ商品の選択を行ってください。

次に、2)のパフォーマンスです。パフォーマンスを測るには、過去の暴落局面でどのようなパフォーマンスを残したかを調べることが大切です。2000年〜2001年のITバブル崩壊、2007〜2009年のサブプライム、リーマンショックにおけるパフォーマンスが、ベンチマークと比較して下落率が低いかどうかを確認してください。当然、良いときのプラスのパフォーマンスについても同時に把握してください。

ヘッジファンドの最大のリスク

最後に大事なことをお伝えします。ヘッジファンドのリスクには、ファンドマネージャーの判断がいつも正しいとは限らないということです。リーマンショックの時に素晴らしいパフォーマンスを残し有名になったヘッジファンドのファンドマネージャーにジョン・ポールソンという人がいました。しかし、2010年以降の運用成績は振るわずマイナスの成績が3年も続いたことも同時に有名な話です。

このように、一人のスターファンドマネージャーに依存した運用は、良いときと悪い時がはっきりしていることもあるため注意が必要です。 このようなリスクを減らす方法として、ファンド・オブ・ヘッジファンドという運用商品・手法もあります。一つのヘッジファンドを選ぶのでなく、相関関係やパフォーマンスを考慮して、複数の特徴の異なるヘッジファンドをまとめたファンドのことです。ヘッジファンドのポートフォリオ運用みたいなものです。 世界の資産運用界ではこのようにファンド・オブ・ヘッジファンドでヘッジファンドを組み入れることが主流になりつつあります。

また、さらに流動性を確保するために、海外ではヘッジファンドをETFにしていつでも売り買いが出来るように流動性を提供している商品も増えています。このような点を確認しつつ、全体のポートフォリオとの相関関係などを調整していけば、最強のポートフォリをつくることができるかと思います。

まとめ

ヘッジファンドを購入するには、流動性とリスクの所在をきちんと把握し、ポートフォリオ内の一定割合に収めることが大切です。

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